テニスシューズについてのお話

テニスシューズに求められる「機能性」
足の保護 と 素足感覚

この相反するようなテニスシューズの課題をどう区別するか?
@トレーニングのきっちり出来ていないファンテニスプレイヤーは、「足の保護」を。
A鍛えぬいた体を持つリアルプレイヤーは「素足感覚」に優れたシューズを。
@の理由
足底筋膜を鍛えていない人は、長時間のプレイの疲労により足底アーチの低下が現れ、それによる障害発生(怪我)の確率が上がってしまう。
Aの理由
足の裏まで鍛えているプレイヤーは、保護も大切だが、コート上を移動するためのギアであるシューズに求められるものは、「素早い反応」になる。
1/100秒を競うスプリント選手がふかふかのクッション素材をふんだんに使用したスパイクを履いてレースに参加しているであろうか?否。選手に求められるものは、少しでも有利なポジションでボールをヒットするために必要なシューズである。

@Aともに必要なことは、自分の足にフィットしたものであること。
足型に会わないシューズは、靴擦れ、外反母趾、内反小趾を起こすどころか、小さいサイズの場合は、痛くて歩けない(勿論走れない)。逆に大きすぎるシューズは、シューズ内で足が動いてしまうと、靴擦れの恐れも勿論あるが、踏ん張りが利かず膝や腰に障害が出る。特に脚力の強いプレイヤーには必ず出る。

近頃は、縦アーチのみではなく、横アーチも付けたインソール(中敷)を搭載したシューズがやっとチラホラと発売されている。しかし、それは最大公約数的な型で必ずしも全てのプレイヤーにフィットするものではない事を知っておくべきである。
体型がそれぞれ違うように、足型もそうである事を認識しておくべきである。

シューズの「ふわふわ」した感覚は気持ちがいい。しかし、あまりにも柔らかいソール(底)やアッパー(布や人工皮革の部分)は、故障(障害)の原因になることを忘れてはならない。
また、軽いシューズを「売り」にしているものもあるが、多くの場合「軽く」作るために何らかの機能(パーツ)を省き、軽量化しているものがあるので、あまり鵜呑みにするのはお勧めしない。足の場合、腕よりも力(パワー)があるので、50g重くてもあまり気にならない。気になるとすれば、フィットしていないことが原因であることが多い気がする。
逆にフィットしたシューズを選んだ場合、実際は他のシューズよりも重量があるにも拘らず「軽い」と感じるユーザーが多いことは事実である。これは、想像の域を出ないが、フィットしていないと、「素足」とバランスが違うために、それが重さと感じてしまうのではないかと思う。

ラケットは、気持ちよく打て、思い通りに打てれば結果は付いてくる。しかし、シューズは、気持ちよい履き心地(柔らかい)ではいけない。
シューズに求められるものは(試合で勝つこと)(思い通りに動けること)と(健康にプレイし続けること)であり、特に3番目の健康にプレイし続けることは、プロプレイヤーでない私達には、一番の課題ではないかと感じる。
「テニスを楽しむ」と言うことは、テニスを通じ、健康的で活力のある「幸せな生活」を創造すべきで、決して不健康(故障や障害)の原因にしかならない麻薬のようなものであってはならない。

足の感覚は、手のひらと比べ見事に大雑把な感覚であるが、少し気にしているとすぐに判るようになるものである。人により感覚が違うことは当たり前なので感じることは全て正解ではあるのだが、一度試して、フィットしたシューズを体験してみるとすぐ気が付くはずである。今までのシューズが如何に動きにくかったか、と言うことを。

すでにフィットしているシューズをはいているプレイヤーは、現在のシューズに不満がない、当たり前だ。
しかし、フィットしてない、故障の原因になるようなシューズを履いているプレイヤーも何故か?不満がない。これも不思議ではない。何故なら、そのプレイヤーは、もっと自分に合ったシューズ(全てにおいてフィットした快適シューズ)の存在自体を知らず、自分のパフォーマンス(能力)が損なわれていること自体に何の疑問も持っていないから、不満がないことも当たり前なのである。
ラケットほどのカスタマイズが出来ないのがシューズである。
それが、プレイヤーの不理解の原因のひとつであることは確かである。
しかし、テニスいや、スポーツをしない人も含め全ての人は知っていることがある、それは「サイズの合わない靴は、歩きにくい」ということ。
歩きにくいということは、走りにくいということである。

テニスの場合、どうしても「ラケット」に目が行きがちである。
サッカーや陸上競技の場合、使用用具の競技結果に対する重要性が、シューズの比重がほとんどであるので(ウエアを除いて)楽しむスポーツ参加者もシューズの重要性を知っている。
テニス参加者のシューズに対する「不理解」の最大の原因は、我々テニスショップの販売員が、その重要度を理解していない不勉強さが現在の「シューズは消耗品だから…」見たいな状況を作ってしまっていると感じる。(反省)